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■ 近頃のこと

2017/10/28

リスを作る

どうにも気に入らずに青葉を引き抜いてしまったアオバズクとサクランボの平薬でしたが、せっかくフクロウを木彫り彩色したのだし、木組みも悪くないのだからと、別の花や野草などで何とか再生出来ないものかと思い続けていたのです。
この秋、立て続けに『沢蟹』『サルトリイバラ』と紅葉を題材にした平薬が出来たり調子が良かったものですから、アオバズクだと季節に無理はあるのですが、秋の野草や月によって『望郷』とでも題する、アオバズクが渡り去る直前の平薬に仕立てられないものかと考えて思い付いたのが、カラスウリでした。そんな理由でなくとも、以前から興味深く写真や実物に目を留めてきたカラスウリだったものですから、早速作り始めてしまったのです。
紅葉ばかり重なるのも厭わず、カラスウリが出来るなりアオバズクの止まる木組みに絡みつけみたのですが、やはり無理なものは無理。カラスウリの構成そのものは悪く思えませんでしたので、無理の大元であるアオバズクだけを外したのです。
カラスウリだけになった平薬を前に、とにかく何か野鳥以外の動物を添えて完成させたいと考えて真っ先に浮かんだのは、以前から彫ってみたくていたリスでした。
そもそもアオバズクを作るきっかけになった図鑑の絵のことは以前書いたのですが、その図鑑とは昭和32年に北隆館から発行された『現代動物大図鑑』というものなのです。
図鑑の前書きを読んでみると、絵は小林重三、佐々木啓祐、清水勝、牧野四子吉という四氏によって描かれたのだとか、画家としてどなたの名前も初めて聞くものだったのですが、どれもがどことなく動物に対する温かい眼差しのようなものに溢れているのです。もちろん早速リスに当たってみたのですが、そこに描かれていたリスもまた、何ということもないポーズにオーソドックスな彩色でいながら、それが何とも優しい穏やかさに包まれた愛おしい姿なのでした。すぐさまアオバズクの時のように絵の通りのポーズで彫り、そして塗られているように彩色したのです。
それにしてもリスというのは何とも可愛らしいものです。あまり説明的にならないような彩色を心掛けたのですが、単純明快な彩色というのは至難の業ですから、結局はいつものように私風の絵画的な彩色に留まってしまいました。力量の限界です。
出来上がったリスを何とか木組みに乗せてみたものの、カラスウリの紅葉がおよそ代わり映えしません。そこで、ほんの少しだけ降った初雪という設定にして、うっすらと岩胡粉を付けてみたのです。
取り立てた出来にはなりませんでしたが、自分で作っていながらリスの可愛らしさに癒されているのです。

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