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■ 近頃のこと

2018/10/14

嗚呼、おすべらかし-雛の髪-

以前、女雛の髪型である『おすべらかし』の形があまりにも実際と違ってしまい、それが受け入れられなくなった私は、結局自分で髪結いをし始めた話を書いたことがありました。
私の方法は、頭(かしら)に合わせて、一つずつ針金で髪型の骨組みを仕立て、それに和紙を貼り重ねたものを土台にして髪を結うのです。
しかし、一つずつのことですから、どうしても目測の乱れからの出来不出来やら、そもそも理想とする『おすべらかし』の形が定まっていなかったりという根本的な要因などから、なかなか決定的な髪型が作れないでいたのです。
コレクションする二番親王立像の組物は、最初十九人揃だったものが徐々に増え、今や二十六人揃に膨らんだのですが、こうした組物の人数は奇数を良しとすることから、もう一人増やしたい思いを深めていたのです。
そんな折り、丸平さんに残されていた古い頭の修理をしたのですが、その中に尺二寸の雑兵でしょうか、とりわけ汚れて割れも出た不細工な頭があったのです。練習がてら、先ず割れた箇所を胡粉で埋め、肉色の顔色を白く塗り直してみたら、すこぶる年増の官女に相応しく仕上がったのです。改作した私ですら、本来の顔など思い出せないほどの著しい変身で、妙に気に入ってしまいました。
直ぐに髪も結ったのですが、それがまた上手く出来て、自分には理想的な『おすべらかし』の形にも思え、少しばかり自信が持てたのでした。
その自信というのは、既に私の髪結いの理想が、人形の結髪技術として目指される『一糸乱れず』というものではなくなっていて、押せば乱れる、型崩れもする。常に整然と髪がくしけずられているわけではないという、本来の姿の再現にあることを確認出来たということだったのです。
私の髪結いは、一糸乱れないような結髪をし易いがため、本来の鬢(びん)の形を変えてしまったような姿勢ではなく、こめかみから斜め上に引き上げた髪の曲線を再現するリアルさをこそ尊び、同時に長い髪や髢(かもじ)を鬢付け油で固めている質感の再現が目標なのです。
それにより、一度は結い直した尺三寸の五人官女の髪も、再々度結い直さずに居られなくなったのですが、今度は何とかそれなりに出来たようで安堵しました。
さて二十七人目はと言えば、既存の刺繍小袖による二人の官女とで三人官女にするプランなのです。これならば年増の官女に仕上がった頭を必然的に活かせます。
ところで、何故雑兵の頭が年増の官女になったのかというと、本来不細工な造作だったからでしょうか、瞼を盛り上げたりの工夫を施してみようが、眉を描くと様にならなかったのです。それで、眉無し→既婚女性→年増官女というわけです。
とにもかくにも、お気に入りに仕上がったこの官女には、定番の白い小袖でなしに、地味な織物で仕立てた小袖に緋の袴という、特別な官女に仕立てようと考えているのです。随分考えましたが、手には若松と紅白餅の三宝を持たせることにしました。
二番親王の組物は、いよいよそれで不足のない完成を迎えることになるでしょう。

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