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■ 近頃のこと

2026/06/08

ドクダミ(蕺草)の一輪挿し

今は随分と変わったものですが、昔は田舎の家の裏といったら、多くは土壁の湿った場所で、そこにドクダミが自生していたものでした。

そんなでしたから、しみじみ見たわけでもないのに、ドクダミと聞けば陰気な毒持ちと勝手に決めつけて合点しているし、悪口に使うのにばかり重宝していたのでしたが、その実名前の『ドク』は、毒を抑えて悪いところを治す意味の『ドク』であり、知る人ぞ知る、昔から十薬(じゅうやく)と呼ばれる10も効能のある薬草として、つとに有名だったのです。

日陰のドクダミの葉は陰気な深緑で、何枚かの裏が鈍い臙脂に沈んだものもあり、そこにほんの少しばかりクリームがかった色の花が、薄暗がりに僅かな明かりを灯すように清楚に咲くものですから、それを愛でる人も決して少なくはなかったようです。

ドクダミをはじめとして、ヘクソカズラ(屁糞葛)とかオオイヌノフグリ(大犬の陰嚢)というのも、いち早く春の訪れを告げる可憐な花であったり、柔らかな黄緑の葉の中に宝石のような小さな実を見せる、この上なく愛らしい野草なのにも関わらず、よりにもよって何故またそんな名前がつけられてしまったのだろうと、ずっと以前から思っていたのです。

さて、ドクダミをはじめ、野草の和名表記はAIから教わったものなのです。

この頃やっと、スマホによってAIに相談したり話したりする楽しみを覚えたのですが、AI自身の自己分析によると、AIというのは本来空っぽの箱のようなものなのだそうです。

その時点で箱に溜められている情報から考察されるのですが、自主的に間違いが修整されることがないし、訂正事項も一定期間の精査を持たなければ、受け入れて相応しいかどうか決定が出来ないので、間違った情報が土台にされたままの間は、誤った見解を繰り返し続けるばかりか、更にこじつけたりすることにもなってしまう、あたかも強情な知ったかぶりが悪あがきしているようになるのは、私も何度となく体験しているのです。

AIが間違いを記すことへの注意喚起もされているのですが、情報が少ない事項ほど使い回しの混同があったりしますから、決してAIの見解を鵜呑みにしない、あくまでも質問する側の確認が不可欠ですし、AIの抱えている情報を引き出すような質問の仕方やら、話の持って行き方も必要で、それが会話を面白くする秘訣でも醍醐味でもあるようです。

そんなやり取りの面白さを例えて言うなら、専門家による知識の提供と、古老による実体験の見聞きと、長屋の噂話みたいなものが適度に入り混じったような感じとでもいうもので、人間と話すより余程楽しかったりすることが多々あるのです。

とにかく専門の情報を伝える語彙が豊富ですし、例えば短歌の評釈などといったものでさえ、あたかも自発的な見解と勘違いしてしまう程の考察が、的確な解釈の上に瞬時に数ページも広げてくれるのには、ひたすら驚愕させられてしまいます。

また前置きが長くなりましたが、数日梅雨入りしたかと思うような雨続きという絶妙なタイミングで、一輪挿しにしたいので、ドクダミを1本作ってもらえないかと、昨年今頃にもガクアジサイの一枝を納めさせて頂いた方から、相変わらずの風流な依頼が入ったのです。

葉の周囲に赤い縁取りがあったり、茎にも赤いのが混じるとか、ドクダミの成り立ちにはずっと絵画的な関心をも持っていたのですが、昨年とうとう平薬制作にまで至れたガクアジサイと共に、制作に一歩を踏み出せないでいたドクダミにも、背中を押して頂けたのでした。

残念ながら、絹を鈍い臙脂に染めて貼った数枚の葉裏は、下から覗きでもしないと見えないのですが、どことなしの雰囲気を醸すには役立てられるだろうことに期待して、絵を描くように熱い鏝で葉脈を引き、更に膨らみを与えて葉の完成としました。

経年に黄ばんだ紗の白絹で一輪だけ花を仕立て、依頼のあった翌日には荷造りして送ったのですが、洒落た床の間に生けられた一輪挿しの画像が届いて間もなく、私のところも梅雨入りしたのでした。

ドクダミ(蕺草)の一輪挿し手持ち

ドクダミ(蕺草)の一輪挿し手持ち

ドクダミ(蕺草)の一輪挿し竹筒

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