私の『丸平コレクション(https://maruhei.oki-suju.com/)』にある、御引直衣立像の女雛に持たせる菖蒲を作ってみました。
先代六世大木平蔵の制作によるこの立像は、装束からして丸平さん以外では全くといって良いほど作られない特殊なものですが、本来は男雛女雛共に檜扇を手にしただけの作りながら、折角日常の天皇を模した姿なのだしと、私が葵祭当日に設定して男雛に葵を持たせたのでした。その葵は、和漢三才図会に記載された図を参考にして作ったものです。
撮影した時、女雛は檜扇を持たせたままにしたのですが、そんな設定ならば尚のこと、季節を合わせて菖蒲でも持たせようか...ならば根引きの菖蒲にしようと作ったのです。
節句人形といえども、何かを持つように仕立てた手であれば、季節や行事に合わせた物を持たせるという演出次第で、節句の時期だけにとどまらずに飾る事が出来てしまうのです。
一枚も写真が残って居ず残念なのですが、お台場だったかに支店を出された寿司屋さんが、縁起物として店に飾りたいと丸平さんから白無垢のお多福人形を買われた事がありました。
お多福は手に三宝を持っていて、そこに節句毎に有職造花などを替えて載せたりするのですが、常に店に飾り続けるという事でしたから、折角なので月替えで載せられるようにしてあげようということになったのです。
一月は若松、二月は豆まきの枡に鬼の面、三月は桃花、四月は桜、五月は菖蒲、七月は七夕、八月は盂蘭盆の牛馬など、九月は菊、十月は月見団子と秋草、十一月は熊手、十二月は羽子板というプラン で私が作ったのですが、困ったのが六月でした。
行事にも事欠いて、散々考えても良い案が出なかったのですが、ふと梅雨に辿り着いて、青梅の実った一枝を作ったのでした。その青梅もなかなか可愛らしかったのですが、豆まきの枡に鬼の面を入れた二月の飾りなど結構面白く出来て、今でも自分がどんなものを作って納めたのか見てみたいと思うことがあるのです。
小道具制作の楽しさや成功は、ひとえに閃き次第...との思いが強いのです。
さて、私にとっていくら作っても難しさが変わらず、いつまで経とうがどうにも苦手なままの花が菖蒲なのです。そもそも花びらの鏝当てに納得がいきません。
だからあまり作りたいとも思わないのです。