有職造花の創作から遠ざかる時、それでも日常に自然を目にしながら、あの花はどう付いて居るんだろうとか、この草むらを有職造花で再現するならどんな色に染めたらいいんだろうとか、常に考え続けています。
今は大好きな鉄線が花を付けているし、名残りの木蓮といったら、鮮やかでたおやかな黄緑の葉と共演するかのように紫の花びらを見せてくれているけれど、あの花の鏝当てはどうすれば出来るとか、いっそ葉も同じ鏝当てにした方が良さそうだとか、牡丹の花芯はこうでも出来るとか、いつでも目での制作が止まる事はありません。
しかし、私が今最も頭で追い続けているのは、タンポポの綿毛のある一隅なのです。
葉桜に変わった季節、その日陰の根元に雑草が生い茂り、ヨモギが伸び、ヒメジョオン の小さな白い花がアクセントのように点々と咲いている中から、陽射しの不足でひょろりと首を伸ばしたタンポポが、それでも綿毛を宿らせて種子を
飛ばす準備を終えている...
そんな光景を平薬で作りたいと思い描いています。
問題なのは桜とする自然木で、その重さの軽減にヒントが浮かびません。
素材の太い幹をそのまま使ったら重過ぎるからなのです。
張り子で作るのは容易だけれど、自然木が放つ意外性と可能性には遠く及びません。
そんなこんな...今年の春は、何も作れずに過ぎていくのかもしれません。