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■ 近頃のこと

2017/10/21

瓶子の口花

私の丸平雛コレクションの二番親王立像は、女雛ですら足元から額まで60cmもある殆ど最大級のものです。
雛飾りでは、男雛と女雛の間に三宝に載せた瓶子(へいし)を置くのが常なのですが、何しろ大きさが大きさですから、それに相応しい瓶子飾りというのは、瓶子の口を檀紙で包む口包み(くちづつみ)から、その上に紙包みした有職造花を飾る口花(くちばな)まで、とにかく特別に誂えなければなりません。
もう十年以上前になるのではないかと思いますが、珍しくヤフーオークションに、それなりに大きさもある雲上流の瓶子飾りが出品されたのです。その水引結びが、丸平さんで三井や岩崎に納めた雛飾りに使われているのと同じ結びだったものですから、一騎打ちの果てに数万も出して落札したのですが、届いたものといったら檀紙など黒ずんで汚れてしまっている、口花は虫の穴が空いていると、随分惨めなものだったのです。仕方なく、檀紙を薄く胡粉塗りしたり苦肉の策の手当を施して、何とか二番用に使った事があったのです。
しかし、何よりも大きさが足りませんでした。口花も凝った作りなどではありませんでしたから、大きさも有職造花も、二番親王立像の水準に相応しいもので誂えなければと願い続けて来たのです。
数年前、せめて口花だけでも特別の有職造花に替えようとして、柳に桃花という常の組み合わせながら凝ったものを作ったことがあったのですが、それまでの口花と付け替えはぐっているうち、四番立像に使える口花をという制作依頼が入り、こちらは直ぐに使う予定などないのだし、このままで良ければと譲ってしまったのです。
先日、白鷺と柳の平薬を作ろうとして結構な量の柳を作ったものの見事に失敗してしまい、全ての柳を引き抜いてあったのですが、突然それを利用して二番親王用の口花を作ってみようと思い立ったのです。
今度の柳には、ススキを作るのと同じ手法で仕立てた黄色い花房を幾つも加えて早春の彩りを添え、桃の花は一枚ずつ暈かし染めしてふんわりと鏝を当て、雄蕊は棕櫚(シュロ)を紅に染めてから山吹の岩絵の具で花粉を施すなど、出来るだけ瑞々しい華やかさを引き出せるように仕立てました。口花のサイズは上下がちょうど30cmですから、それに見合う大きさの紙包みと瓶子を誂えて三宝に置いたら、十分二番親王の瓶子飾りとして使えるだろうと思っています。
とはいえ、いったい何時になったら段飾り出来る日が来ることか。この口花が陽の目を浴びる時は来るのだろうかと、また二番親王立像尺三寸二十六人揃という雛飾りを眼前に出来る日を願うことに、切実な拍車を掛けただけになってしまったのでした。

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