動物の木彫り彩色をする時、いつも参考にしながら惚れ惚れと眺めてしまう図鑑にある白うさぎも野うさぎも、それはそれは可愛らしく描かれているのです。
先日、その図鑑の図によって初めてリスを木彫り彩色したのが結構面白く出来たのに気を良くして、いよいようさぎを木彫り彩色することにしました。
いよいよというのは、図鑑に描かれた白うさぎがとりわけ質感も見事に描かれて素晴らしかったせいもあって、随分前からその図を立体にしたような木彫り彩色のうさぎを作りたくていたものの、あんな風には出来ないだろうとの躊躇が大きく、なかなか取り掛かかれないままでいたからなのです。
とはいうものの、その実平薬に仕立てようとする飾り物としてのうさぎですので、それほど厳密に原画を写すという訳でもないのですから、ポーズは野うさぎ、彩色は白うさぎでと、都合良くいいとこ取りして勝手に合体させてしまったのです。
白うさぎは、この春に顔だけを十二支の面作りで木彫り彩色しているのですが、今回は全身ですからもう少し造形的に写実の要素も叶えようと思いました。図鑑は1動物1図のことで、もちろん横からとか一方向でしか描かれていませんから、いつもの通りインターネットで違う角度の画像を探して、こんな感じだろうという推測で作ったのです。
さて、こうした立体のものだと、どちらを手前にするかということを予め決めて作るのですが、全身の動きからとか、彩色が手慣れたりするうち、反対側の方が面白く出来たり、平薬の構成上反対向きの方が相応しかったりすることがしばしばあるものですから、なかなか予定通りにはいきません。それだけアバウトと言えばその通りなのですが、しかし正面に設定していなかった側を正面ほど彫り込んでいなかったり、描き込んでいなかったりすると、急な変更に慌ててしまっていけません。
もちろんそれは、身から出たサビという以外の何物でもないのですから、出来るだけどこから見られても良いようには作るのですが、どうしても出来不出来は出てしまうのです。この白うさぎも、途中で正面が変わったり何度も迷走した挙げ句に、何とか元に戻ったのでした。
白うさぎは前足の先端から尾っぽの端まで8.5cmです。近頃、ついつい木彫りも有職造花も、直径30cmの輪に構成するには大き過ぎてしまうことが多かったこともあり、原点に戻すべく小さめに仕立てました。
さて白うさぎの木彫り彩色が完成するなり、それを使ってどんな平薬が出来るものかと、頭の中での楽しい計画が始まります。そうした時の発想といったら、あたかも大好きな温泉がこんこんと湧き出るようで、それが止めどない連想によって更に広がって行くのです。
白うさぎ→十五夜→満月→餅つき→杵→放置→廃墟の納屋→蔦→名残の白菊といった具合です。
出来上がりは『秋の平薬』を是非ご覧下さい。