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■ 近頃のこと

2014/08/12

辿り着いた八月の平薬復元

昨年から手掛けていた『書院懸物図』の復元ですが、どうやったら作れるのか、まるで制作のメドが立たない女郎花を題材にした七月の平薬以外、一つだけ後回しにしたままだったのが八月の平薬(萩に雁)なのです。(挿図①)
勿論、藤原定家が詠んだ八月の歌からの図案なのですが、何しろ雁を5羽も作らなければならないため、それまで18羽も木彫り彩色していてからの5羽にはいささかうんざりしてしまい、後回しにしてしまったのです。
大作だった『桜立木』と『切子燈籠』を完成させ、納品してしまった後、別に平薬にまとめるつもりだったわけでもない朝顔を作り、何気ない工夫で花に情緒を与えられる成果を得て喜んではいたものの(挿図②) 、所詮次の制作に辿り着けない手持ち無沙汰を鎮めただけの事でしたから、何だか身の置き所が無いまま、何時の間にやら復元を後回しにしたままの平薬と同じ月の八月を迎えてしまったのです。
すると新暦旧暦の違いこそあれ、萩の咲くのももうそこまで来ているし、季節に季節の物を作るというにも相応しく、木彫りも懐かしくなっていたりもして、平薬の復元に戻るには渡りに船の都合良さとタイミングなのでした。
手慣れた萩の制作は根気だけの問題に近く、先ずは鳥の制作からという事にしたのですが、今回は胴体のみを木彫りして、複雑な羽は厚紙で作ることにしました。(挿図③)
とりわけ左側の二羽は、見せ場にもなるようなポーズに難儀するかと思いきや、割合楽に上手くもいったように思います。(挿 図④)
胡粉塗りを重ね、岩絵の具で彩色。最後に水掻きの付いた足を付けて完成させます。
鳥の制作というのは、エンジンさえ掛かってしまえば面白いものなのですが、そのポーズの付け方といったら人形の手を彫っている時とまるで同じで、ほんの少しの角度や曲線を彫り出す事で、思いがけないほどの表情を醸し出せるのです。

...そんなわけで一番厄介なのは、なかなか掛かってくれないエンジンって訳でした。

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