ちょうど一ヶ月程人形作りの真似事に専念していたのですが、三体が出来上がって数日は良い心持ちで眺めていたのです。それが昨夜、最後の仕上げとして作った小さなスミレの花を子どもの足もと植え付けてしばらくしたら、いきなりもういいや...という感じになってしまったのです。だから解体してしまうことにしました。
結局着物は、寸法出しのための試作を含めて六着縫いましたが、とりわけ染めた絹を横縞に縫い合わせて生地としたものから仕立てた二着など、それが自分の手で着物に縫い上がって行く時間といったら、なかなか幸せだったのです。それにしても十二世面庄の頭(かしら)に手を付けなくて良かったと、そればかりは胸を撫で下ろしています。
素人仕事とは言え、その制作からは色々学び得たことも多く、先ず有職造花から離れた手持ち無沙汰の時間を、ただぼんやりと過ごすことなく居られただけでも有意義だったのですが、足下に咲かせる有職造花を作るなり本来の自分に戻ったというのも、或いは"憑き物が落ちる"といった類いなのかもしれません。また、専門の手が止まってしまおうと、焦ることもなく寄り道を楽しめるようになれたというのならもっと好ましいことではないかと、一人でニンマリもしているのです。
15日の朝は初霜かと思うほどの空気の冷え込みでしたから、庭いっぱいに残る色とりどりの残菊も殊更好ましく、有職造花ならではに季節を先取りして、小菊にうっすらと霜が降りた光景を平薬にしてみようかなどと、晴れ晴れとした気持ちで眺めていたのでした。