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■ 近頃のこと

2014/11/19

檜扇の飾り紐

以前画像も載せたのですが、五節舞姫制作依頼の準備として檜扇も糸花(柳に桃花)も出来ているものの飾り紐がまだでしたから、細い絹紐を買ってきて自分で編み始めました。
『にな結び』というこの結び方は、紐の向きだけを注意していれば難しくもないはずなのですが、さて端正に結ぶとなるとなかなか厄介なものです。
丸平さんが感嘆した職人として挙げられていた、通称ハタジン(畑甚?1970年代初頭頃没?)さんという紐職人の技といったら、まさに凄まじいばかりの出来上がりなのです。しかも何より、これ見よがしなところが微塵もありません。
私がコレクションする六番女雛の持つ檜扇の『にな結び』もハタジンさんの手になるものですが、何度見てもこんな芸当が出来るものかと感嘆するばかり。もっともハタジンさんの場合は、撚って紐にするところからの制作ですから、紐自体の出来が『にな結び』の完成度を完璧にしているのでしょう。しかし
本人は、その紐制作を『居眠りしていても出来る。』と仰っていたそうです。職人というのは、概して優れた者ほど謙虚で勉強家、下手クソなほど大層な物言いをするし、教えたがらないものです。
細い紐で『にな結び』していて面白くなり、平薬に使う五色紐で結んでみるとずっと楽だし、ピッチリと出来上がります。それは、特注で出来てくる京都の紐が優れたものであることを立証しているのでしょうけれど、ならばハタジンさんが作られた五色紐といったらいったいどれほどの水準だったのかと、つくづく手にして見てみたかった思いが溢れるのです。
失われてしまった京都職人の技というものはあまりにも大きすぎて、今となっては京都人であろうとその実感もないという有様のようです。

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