依頼があって高さが80cm近い松の立木を作ることになったのです。
松そのものの制作は別段厄介でも難しいこともないのですが、何せ松では初めての大きな立木の事で、パーツがどれだけ必要なのか見当が付かないのです。
とりあえず400程の個体を作り、それを5つ1組として80の小枝が出来上がりましたが、並べてみると壮観なものでも、使い始めるとあっという間に使い切ってしまうものです。
この依頼には面白いプランがあって、松の根元なりに何らかの花なりを添えて季節を表して欲しいと。それで一年中楽しめるようにとのことですから、そこまで有職造花を愛してくださるのも嬉しい限りですし、そういう工夫好きでもある私は小躍りしてしまいました。
問題なのは、松の本体が完成した時点で遠方の依頼者に送られてしまうわけですから、後から作り足す四季の有職造花なりを組み込むのは依頼者の手に依らなくてはなりません。それがどうやったらスムーズに間違いなく組み込んで貰えるかが問題なのです。
生涯叶わないでしょうけれど、私には有職造花で四季の庭を造るという大きな望みがあるのです。戦前、丸平さんが納めた『曲水の宴』にあるような大きな庭を、様々な有職造花の立木で造ってみたいのです。勿論作ることは今直ぐにでも出来るのですが、何せ嵩張る(かさばる)代表格のような有職造花のことで、保管場所に困ってしまうのです。
その意味からでも、今回の依頼はその望みを叶えるに準じた制作として精一杯楽しませて貰おうと考えているのです。