やっと出来上がった大きな松同様に、以前作った高さ50cm近い大きな桜立木もまた、そもそも様々な丸平さんの人形とコラボさせるための依頼で制作したものだったのです。
その桜の納品後、コレクターの方がオークションで上出来の黒馬を落とされ、その寸法に合わせた白拍子の制作を丸平さんに依頼されたのでしたが、八寸(額まで24cm)という大きさの白拍子はあまりにも見事な出来映えで、桜と組み合わせてみると、驚くばかり更に良くなったのです。
白拍子達が至ったのは、吉野の峠でもあったのでしょうか、折しも道端の桜は満開。息を整え手を翳して眺め見る山々は、見渡す限りの桜だったのでしょう。白拍子の口からこぼれる感嘆の声が聞こえそうです。
馬上にある、少し年嵩の白拍子もまたその光景を眺めていますが、どちらが促したのか、二人の眺める先がピッタリと合ったように見えたのには驚いてしまいました。
この白拍子の手ですが、以前『近頃のこと』で『手に口ほどの』という題名で紹介した木彫りのものなのです。特殊な動作に誂える手というのは、当然人形をどんなポーズに仕立てるのかというプランがあって彫るのですが、大きさも手の表情も、実際に人形に付けてみるまでは完成と言えないのです。曲げた手首の角度などは殊更に難しいもので、しっくり嵌った時はいつもながら安堵の胸を撫で下ろすのです。
尚、松と12ヶ月の添え花は、『その他の有職造花』に載せておきました。是非ご覧下さい。