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■ 近頃のこと

2015/02/17

五つの節句

先日仕上げた茱萸嚢(ぐみぶくろ)を重陽の官女に持たせてみました。そもそもが縮尺なのですから、当たり前と言えば当たり前なのですが、手にさせての大きさやポーズに問題もなく収まったので安心しました。
しかし、こうして五節句にまつわる飾り物を官女に持たせたところで、いったいどれだけの方々が、例えばこれを重陽節(ちょうようせつ)の必需品だなどと指摘出来るでしょうか。だいたい、九月九日が節句なのだという事どころか、節句自体が五つあるという事すらが、とうの昔に忘れ去られてしまっているのです。
宮廷で最も盛んな節句行事だったという、九月九日の重陽節が一番顧みられなくなってしまったのは、未だ残暑真っ直中で菊など咲くはずもない時期に、菊花に宿った夜露を愛でよだなどと言われてもどだい無理な話。新暦の採用によって、季節の到来に1ヶ月もの差が出来てしまったというのに、季節に生み出されたが如くの旧暦行事日程までをも新暦の日付に移行してしまった無茶に、最もその弊害を受ける事になってしまったというのが、その理由なのかもしれません。
何れにせよそもそも五節句の決まり事など、庶民が知るよしもない宮廷の風習なのですから、こうした人形にその雛形を残して後世に伝えるのも、有職造花師の任務ではないかと考えているのです。

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