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■ 近頃のこと

2015/03/26

季節に寄り添う

端午の節句の御祝いにしたいからと、直径20cmの菖蒲平薬の制作依頼があったので、久しぶりにオリジナルの平薬を制作する下拵えを中断させて取りかかり、割とスムーズに完成出来たのです。
オリジナルの平薬というのは、山桜の下に山吹が咲いている光景で、そのために山桜の葉を沢山作っていたのですが、以前復元の平薬制作で千鳥を木彫り彩色したもののうち、使わなかった千鳥が転がっていたのに少し手を加えて雀に改作して遊んでいたらその方が面白くなってしまい、木っ端でもう一羽作ったのも非常に可愛らしかったので、それらを何とか活かした平薬を作りたくなってしまったのです。
道端に満開で居る連翹(レンギョウ)を見れば、それに止まらせてみたくなったり、季節はまるで違うのですが、お茶の花との組み合わせはどうかとか、何やかやと決めかねているうちに春分の日を過ぎてしまい、桜も開花を始めてしまいました。
この頃、季節に外れた制作というのが億劫で億劫で、少しばかり季節を先取るのはワクワクするほど良いのですが、連翹のように少し遅くなったものを作るのは嫌なのです。
結局、出来上がっていた山桜の葉を沢山使い、以前から好きだった渡辺省亭の描いた『桜と雀』という絵を思い浮かべられるような枝振りにして、そこに二羽の雀を飛ばせたり止まらせることに落ち着いたのです。とてもお気に入りでいます。
こんな風に、移りゆく季節に絶えず便乗しながら、季節ならではの有職造花を思い付くままに作る...どうせ売れもしない有職造花のことですから、そんな制作姿勢こそが自分には最も相応しく、又、充実した満足も得られるのではなかろうかと、いよいよそんな風に考えて始めているのです。

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