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■ 近頃のこと

2015/04/13

山吹の平薬

花屋で目にするなり、そのあまりの美しさに思わず買ってしまった一重の山吹でしたが、それは八重の山吹を見慣れた目に一際新鮮だったのでしょう。黄色の花弁に黄色の雄しべというのも心地よく、後日思いがけず駅までの道端にその花を見つけた時、立ち止まってしげしげと眺めているうちに、やっぱり作ろうと直ぐに準備を始めたのでした。
有職造花で作る山吹の花も葉も、抜き型や鏝当ては山桜とまるで同じなのですが、色が違うだけでこんなにも変わってしまうのです。しかし、太い幹を持たずにたわんで咲く山吹の事ですので、その構成はことのほか難しく、どうにも様になってくれません。
花と葉を組み合わせて小さな株としてから、それをまた幾つか合わせて枝としたものを輪の中に植え付けるのですが、植え付けては間引いてみたり、あたかも生花を剪定するように花や葉を切り取ってみたりと、そんな繰り返しを重ねるものの、ゴテゴテしてしまったりで、なかなかスッキリまとまらないのです。
今回も、最初から木彫り彩色した野鳥とのコラボを考えていたのですが、鳥はノゴマという野鳥に決まっていました。決まっていたというのは、様々な季節の花と共に、標本のように細密に描いた鳥とを組み合わせて描いた図鑑のような本(日本鳥類写生大図譜)があり、そこで山吹と組み合わされていたのがノゴマだったからなのです。私にとって、木彫りの鳥を彩色するのに、これほど助けられる資料はありません。
ノゴマは北海道でしか繁殖しない渡り鳥なのだとか、本州には渡りの途中に立ち寄るくらいだそうですから、目にしたことがなくても当たり前なのでしょう。喉は赤い羽毛で覆われ、目の上には眉のような形に、真っ白な羽根が生えているのも可愛らしい野鳥です。
更にその図譜では、ノゴマの目の先に一頭の蝶も描いてあるのです。もちろん蝶の種類までそのまま頂いてしまうことにしました。というのも、有職造花に昆虫や鳥などを合わせる際には、その花と季節や分布が違わないようにしなければならないという大きな問題があるからなのです。とりわけ昆虫など、ともすればまだ現れていないものになってしまいがちですから、こうした書籍はとても重宝なのです。
蝶の羽根は紙、僅かに12㎜の胴体は木彫りですが、胡粉塗りしてから岩絵の具で彩色してあります。粒子の粗い岩絵の具での彩色は、鱗粉の表現にピッタリだったようです。
もがいたところで、良い出来にはなり得ないでしょうけれど、近いうちに完成させたものを『春の平薬』に載せるつもりで、未だ山吹と苦闘して居ります。

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