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■ 近頃のこと

2015/05/16

カワラヒワとブタナ

色々な小鳥を木彫り彩色して来ましたが、今度はカワラヒワという小鳥を作っていたのです。
羽根を広げると黄色の部分が帯状にあるすずめ科の野鳥ですが、いつも彩色の参考にしている『日本鳥類写生大図譜』という本に飛んでいる姿があって可愛らしかったので、ポーズも色もその通りに作ったのです。
しかし塗り始めてみれば、羽根の色があまりに濃い茶色で飾り物としたら重すぎましたし、実物はどうなんだろうと写真を調べてみたら、色合いがまるで違うのです。
様式的な彩色を目指すほど、大まかな色とその塗り分け範囲を把握しなければなりませんから、何度も何度も塗り直してみるのですが、まるでこれで良いという段階に至りません。
羽根の一枚毎に細部まで描いてみては、上から薄い絵の具を重ねて暈かしてみたり、そうやって出来上がったものを黄鼠で塗りつぶしてやり直したり、ああでもないこうでもない、そんな挙げ句に至ったのがこれなのです。
何せ一羽だけの制作ですから、量産に備えた色彩や塗り方の統一を目指す必要もなく、重ねた色を顕わにして残すなど、あくまでも一品物のすることで、結局日本画のような彩色になってしまいます。
これはこれで、塗り重ねられなければ絶対にこんな色にはならないというような、岩絵の具ならではの日本画的な良さもあるのでしょうけれど、祇園祭で引き回される蟷螂に見るような彩色が出来たならと望んでいるのに、いつまで経っても上手く行きません。

話は変わりますが、一昨年の梅雨時だったか、初めて露草(ムラサキツユクサ)の平薬を作ったのです。『螢』という題名が決まっていた平薬でしたから、真綿を黄色に染めて薄く伸ばし広げ、木彫りの螢の尻に引っ付けて露草の茎に留まらせてみたりしたのですが、その螢自体の出来が気に入らない以前に、そこまで説明的では何の情緒もないだろうと使わなかったのです。
その代わり、野原にひょろひょろとやたらに首ばかりを伸ばした先端に、タンポポを小さくしたような輝かしい黄色の花が、首の長さ故に無数に浮かんで見える野草を作って露草の周囲に散らし、薄闇に飛び回る螢の光に見立てたのでしたが、今年はその野草が例年にないほど沢山、野原や道端に咲き乱れているのです。
いったい何という花なのだろうと調べてみたら外来種なのだそうで、フランスで『豚のサラダ』と呼ばれているため、日本名を『ブタナ(豚菜)』としたのだそうです。
確かに、気分屋みたいに好き放題に伸びて、無数の黄色い花を宙に浮かせているのだけれど、その輝かしい黄色の美しさは格別ながら、何しろ所構わず蔓延り咲いているようですから、或いは日本本来の植生を脅かすほど強かな顰蹙品種なのかもしれませんが、あまりといえばあまりな命名だと、一人で憤慨しているのです。
カワラヒワの彩色も何とか落ち着いたようですから、ブタナの花が綿毛に変わってしまわないうち『野に灯る』とでも題した平薬を作ろうと考えています。
タンポポ種の野草は妙に愛おしく、「春の野芥子」という野草もお気に入りなのですが、一斉に生え揃ったツバナの穂が、群れをなして風に揺れる光景とか、殊更この季節の野原といったら、私にとっては切り取って平薬に残したい野草ばかりなのです。

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