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■ 近頃のこと

2015/07/21

ノウゼンカズラを作る

梅雨明けが近くなると、そこかしこにノウゼンカズラが、赤みを帯びたオレンジの花を咲かせ始めます。その萼といったらエナメルのような質感の鮮やかな黄緑で、何とも対称的なのです。
ノウゼンカズラは凌霄花(リョウショウカ)と呼ばれるのだそうで、その意味は"高い所によじ登って空を凌(しの)ぐ"というのだそうです。よくもまぁそんな相応しい名付けが出来たものだと、中国の感性にはほとほと感心させられてしまいます。ま、あくまでも"昔々の中国に限って"のことですけれど。
ノウゼンカズラを作ってみたいと積極的に思い始めたのは、一昨年の夏からだったでしょうか。ある方と、ノウゼンカズラ・ノウゼンハレン談義をしてからなのです。しかし、先ず花の色と萼の質感に怖じ気づいてしまい、更に蕾をどう作るかという事の前に、スゴスゴと退散させられて、梅雨明けの空を這い昇るように咲く花を、恨めしくやるせなく眺めていたのです。
この梅雨、咲き始めるのを待ち切れない程、どうしても作りたくて堪らなくなってしまったヤブカンゾウを完成させられた時、こんな色の花でも有職造花に作れるんだなぁ...という感慨が一番深かったのですが、そうなるとノウゼンカズラも出来そうな気がして、直ぐに作り始めたのです。
ノウゼンカズラというのは、思っていたより何倍も複雑で個性的な成り立ちでした。ちょうど咲いていた時期で、一つ一つ確かめられたから作れたようなもので、蕾の向きなど言うまでもなく、葉の付き方だけでも写真ではどうにもならなかったでしょう。
何しろ勢いで作り始めたものですから、花弁にハッキリしている赤い筋が、その鮮やかな花をノウゼンカズラだと見させるのに必要不可欠なのだと、花を作ってしまった後から認識するといった有様。ですから、花弁の中で不自由に引かれている赤い筋は、滲まない程度に溶いた顔彩を面相筆に付けて何とか描き足した、まさに泥縄の証なのです。
難題だった蕾は、ヤブカンゾウでの苦肉の策同様に、木彫り彩色したものです。簡単に特徴だけ大まかに彫って、胡粉と泥絵の具を塗り重ねただけなのですが、花に組み合わせたりして小枝に仕立てても、蕾の向きを実物に沿って調整しないと、まるでノウゼンカズラになってはくれません。反対に言えば、蕾の向きを調整するだけで、驚くばかりにノウゼンカズラに変わってくれるというわけです。
さて、ノウゼンカズラを平薬に仕立てるのに、凌霄花という名前通り、見上げる暑い空を凌いで咲く様を作れれば良いのですが、なかなかそうも行かないものですから、やはり垂れ下がった様にしたのです。すると、どうしてもアゲハチョウを飛ばしたくなったのです。
ノウゼンカズラ自体もまだまだ微調整が必要ですから、それを仕上げながらのアゲハチョウ作りには、ワクワクするような楽しみを感じているのです。

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