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■ 近頃のこと

2015/09/15

銀杏(イチョウ)の平薬

ずっと以前、3人の娘のため、丸平大木人形店に3組の雛飾り制作を依頼された方が居られたのです。親王飾りではなく、特別仕様の15~19人揃をです。熱烈な丸平ファンの方でしたが、3人目も女の子だった時『これで、もう1組作れる!』と思ったのだそうですから、尋常なファンではありません。
3人目が出来るまで何度も流産されていたので、生まれることの出来たその子の時には、大事を取られて入院されたりしたのです。一番危なかった時の病室から、まっ黄色に色付いたイチョウが見えたのだそうで、それが苦しい時期を乗り越えた象徴として残ったため、その子のために誂える子供仕立ての女雛の絵元結には、是非イチョウの葉を描いて欲しいと依頼されたのでした。
秋と言えば直ぐに思い起こされるイチョウなのですが、それが平薬になるかといったらなかなか難しいものがあります。それで作ろうともしないで来たのですが、私の平薬が鳥や昆虫と組み合わされるようになってから、それまで二の足を踏んでいた花や野草も平薬に出来る可能性が広がったせいでしょうか、山雀(ヤマガラ)の絵を見ていたら、その羽色を黄色く色付いたイチョウに埋めさせたらさぞ映えるだろうと思えて、早速イチョウの平薬制作に取り掛かったというわけなのです。色付く途中として、一部には薄く黄緑を刺そうかとも考えたのですが、ただただ黄色に埋めさせることにしました。
山雀の彩色には思いのほか難儀しました。割合単純な配色なのですが、なかなかスッキリと収まってくれません。彩色は岩絵の具ですが、粒子の粗さから下の色が透けて見えるのを活かして塗り重ねると、段々思いがけなく深い色合いになって来たりするのです。それでもこれは上手いこといかないままで、イチョウに埋もれさせた2羽ともが後ろを向いているのは、ポーズを生かすばかりでなく、正面が上手く出来ていないせいもあるのです。
三角のイチョウの葉は数多く繁雑なのですが、そこに埋もれるように止まる山雀の羽色は穏やかに引き立って、そればかりは思い通りに出来たのです。

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