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■ 近頃のこと

2016/03/29

白孔雀を作る

牡丹は『行の薬玉』や『四季の平薬』に欠かせない花ですから何度も作ってはいるのです。しかし、有職造花でも屈指の華麗さで仕上がる反面、ともすれば通俗に流れてしまう警戒心もあって、牡丹だけでの平薬を作ったことは無かったのです。
先日、深夜の入浴中にふと、敢えて華やかな紅白の牡丹と白孔雀を組み合わせたら、桃山の装飾美術のような平薬が出来るのではないかと思い浮かんだのです。言わば真逆の発想とでもいうものでしょうか。湯船の中で、木彫り彩色の胴はともかく、重なり合う尾羽根をどうするかなど、色々と考え巡らせていたのですが、結論が出ないままその翌日には、見切り発車のように白孔雀の木彫り彩色を始めたのです。美しい首の曲線は言うまでもなく、膨らんだ胸の木彫りもなかなか厄介なら、輝かしくも温かみのある白を叶えなければならない彩色にも手こずらなければならず、木っ端を継ぎ足して彫り直したり、羽根の根元に薄紅梅やらの岩絵の具を置いてはまた胡粉を重ねるなど何度も繰り返して、何とか木彫り彩色を仕上げたのです。やはり表情を与えられるからでしょうか、私は鳥の頭の彩色が好きなのですが、実際には随分色々な岩絵の具を重ねてあります。どんな鳥の場合でもそうなのですが、目の位置はやり直しを重ねないと上手く出来上がりません。
さて肝心の尾羽根ですが、全体を純白の集合体と捉え、最初は絹スガ糸を束のまま使ったらどうかと考えていたのです。しかし、羽根には孔雀ならでは二種類の先端があって、それが見せ場として必要不可欠なのです。和紙の裏打ちによる絹サテンでそれを作るまでは良いけれど、さてどうやったら絹スガ糸の束と合わせられるのかまるで解決が得られず、結局先端と同じ絹サテンで長短21本の羽根を作り、それに細かく刻みを入れて仕上げて胴体に差し込んだのです。実際にはもう少し長い尾羽根でも良かったのですが、なるたけ直径30cmの平薬に収まるようにしました。白孔雀は、足元から頭の先端まで高さ13cm、胸から最も長い尾羽根の先端まで幅30cmです。
まだどんな牡丹にしようか、どんな位置に、どんな風に白孔雀を置いた構成にしようかなど決まってもいないのですが、パーツを作りあげてしまえば、その出来映えによった思い付きで、さっさと完成することでしょう。どんなものに仕上がるのか、何時ものように私が一番楽しみにしているのです。

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