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■ 近頃のこと

2017/04/30

十二支の面作り その②

あれから、亥(いのしし)➡未(ひつじ)➡酉(とり)と進んだのですが、酉にあれほど難儀しようとは予想もしませんでした。
かつて家には、鶏もチャボもいたのです。チャボを飼っていたのは祖母でしたが、祖母が亡くなったずっと後まで、チャボだけはいたのです。
ちょっと体が不自由に産まれた小さなチャボも居たことがありましたが、私はその子と親しくしていたのです。その体のせいだったのでしょうけれど、いつも仲間外れにされがちで、一緒に餌を食べさせても貰えないようでした。ですから、他のチャボが餌に群がっている時、一人だけ止まり木の上に居たままだったりしたのです。
納屋の軒下の一部を金網で囲って広い小屋にしていたのですが、餌やりはその小屋に入ってするので、止まり木の下に立つ事になるのです。すると、止まり木から身を乗り出して、私の頭を軽くつつくのです。自分にもご飯を頂戴という訳です。いつの間にやら、餌をねだるようになっていました。肩の上にも乗ったように思い出しますが、ひ弱に生まれたがために、かえって人間を受け入れる選択をしたのでしょう。私は小さな入れ物に餌を入れ、止まり木に居るチャボの口元まで運んで、お腹一杯になるまで食べさせたりしたのです。
その子ではないのですが、ある時両手でチャボを掴んで真正面から顔を見てみると、本当に底意地の悪い顔をしているのです。世の中を拗ねて僻んで、根性がひん曲がってしまったような面構えに、思わず笑ってしまいました。以来私の鶏に対するイメージというのは、そこに定着してしまいました。
酉の面は、そのイメージ通りに一晩で彫り上げたのです。しかし、翌朝になったらあまりのデフォルメが見るに耐えず、それでも彩色で何とかなるだろうと強引に進めたものの、悪化するばかり。思いきってくちばしの下の鶏冠(とさか)を切り取って彫り直したり、輪郭を削ったり、色々とやってみたのですが所詮は悪あがき。どうにもなりません。結局金泥でごまかすしかなかったのでした。
強かなそうなイノシシ、人の良い外国人さながらの羊など、矢継ぎ早に出来てとても調子が良く、出来上がりにもすこぶる満足出来ていたので、このまま十二支全部を作ってしまえるつもりになっていたのですが、酉のつまずきによって、気持ちも意欲もすっかり萎えてしまいました。
どうもピンと来ないままでいた子犬を塗り直し、これで一先ず十二支の面作りは止めることにしたのです。

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