以前、お気に入りの図鑑にあったアオバズク(梟)があまりに可愛らしかったので木彫り彩色し、それでサクランボの平薬を作ったのですが、どうにも気に入らずに結局解体してしまい、アオバズクだけが残されていたのです。
しかし、アオバズク自体は結構愛着を消せないだけに出来ているものですから、何とかそれを活かしたい一心で、小枝の沢山出た良い素材があったのを幸いに、それで木組みをしてアオバズクを止まらせると、それはそれで良く収まったのです。
では何の木にしようと考え続けて突然閃いたのが『桐の花』なのでした。花は勿論のこと、花を支えるように頑丈そうな萼にも心惹かれるものがありましたが、パーツは出来てもそれがどんな風に枝を構成しているのか、図鑑やインターネットの画像からでは分からず、木組みに植えられずにいました。
ちょうど、大好きな會津が大雪だというので、もう27年も通っている木賊温泉というところに出掛けることになっていたのですが、帰りの寄り道で柳津というところに足を伸ばした大雪の山道に、さすがに桐の産地である會津のことなのでしょうけれど、桐の木がそこかしこに立っていたのです。
桐には、花の付いていた先端が、萼をしっかりと付けたままで残されているのですが、雪が積もったことで花の付き方やら枝振りやらの構造が際立たせられ、それこそ知りたいところを幾度も見て、確認を繰り返すことまで出来たのです。平薬の完成は、帰った翌日のことでした。
桐の花は、花弁を外側に反り返らせて咲くのですが、お辞儀さながらにうついて花開くものですから、花の美しさを少しでも際立たせるため、反り返る花弁の内側に光沢のある上等な絹を貼って、内外の花色の対比を引き立たせるようにしたのです。
さて桐の花も葉も植え付けてしまうと、やはりアオバズクが余分なのです。大き過ぎるのです。そもそも、アオバズクを活かそうとして始まった平薬制作だったのですが、仕方なく外してしまいました。
こうした紆余曲折も制作の楽しみではあるのですが、また宙に浮かせてしまったアオバズクには済まないことをしたと、心苦しく思っているのです。