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■ 近頃のこと

2017/12/25

ヤフオクで箏を落とす

落札することは滅多にないものの、年中覗いてはいるヤフーオークションに、丸平コレクションの尺三寸楽人にぴったりなサイズの琴が出たのです。
私は雛道具の琴に殆ど興味がなかったのですが、その理由は何故か通俗に流れるばかりのものが多く、縮尺や形体にいい加減さが目立つものばかりにしか思えなかったからなのです。
又、男性が琴を弾くというのが何となく不似合いに思えてしまうことも要因でした。それで七人の楽人を誂えた際にも、琴ではなく形体にロマンティックさを感じた和琴を組み入れていたのでした。
しかし今回の琴には、一目見るなりどうにも心惹かれてしまったのです。全体のプロポーションが良く完成度が高く思えましたし、醸し出されているオーラのようなものに専門性を感じて、すっかり打たれてしまったのです。落とせるものなら落としたいと思ってしまったのです。
そもそも雅楽で、和琴だけが加わる曲というのは幾つも無いのだとか、演奏に加わる頻度としたら琴の方がずっと多いようなのです。和琴は小さな撥(バチ)を持って弾きますから、撥を持たせて作ってある和琴の右手を、新たに琴爪を付けた右手を作って付け替えるだけで、人形のポーズを替えることなく二通りに使えてしまうのです。
オークションは、終了日まで4300円で止まったまま全く動きません。これほどの品物なのだし、数分前から値段が上がり始めるのではないかと思いながら固唾を呑んで監視し続けていたのですが、一向に上がらないのです。
終了3分前になったとき、ともかく不手際で逃したりしないよう入札してみると、たった100円上がっただけで、そのまま落札出来てしまいました。どうやら私の元に来ることが決まっていたのだろうと、ひたすら都合の良いことを考えながら小躍りしていたのでした。
琴が届けられないうちから、作ったまま使わないでいた右手の中から琴を弾くポーズに相応しい手を選定して、それに合う琴爪を作り始めました。黄ばんだ和紙を何枚も貼り重ねて象牙のような色に仕立てましたが、一つの爪の大きさといったら幅2㎜長さ3㎜、それに1㎜の帯が重なるというサイズです。
一本ずつ指に嵌めていくとリアリティもあり、悦に入って眺めていたのも束の間、爪の向きが反対だったことに気付きました。常日頃見るのも忌々しくている、若い女性の付け爪のように装着させていたのです。全く、無知と観察の至らなさというのは恐ろしいものです。外したものは全て捨てて、新たに作り直しました。
届いた琴は画像で見たよりもずっと完成度の高い、見事な仕事に思えました。愛着も日に増す一方なものですから、今後は『琴』とせず『箏』と書こうと、一人で得意げに考えているのです。

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