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■ 近頃のこと

2018/03/07

オリジナルの『行の薬玉』

殊更華やかな有職造花のみならず、その土台となる六角板や籐の環もが真紅の絹で包まれる『行(ぎょう)の薬玉』ですが、何故六角形なのかとか、どんな時どんな場所にどんな目的で掛けられた薬玉なのかとの根本的な由来すら、未だに分りません。
これほど極彩色に溢れた有職造花もないだろうほどの飾り物ですから、形や色の選択のセンスが悪いとか、様々な節度を弁えていないと、目も当てられないくらい下品なものになってしまう危うさがあるのです。
籐の環に有職造花を構成する『平薬(ひらくす)』にしても、環を生かせずに有職造花をはみ出させたりしてしまうと、まるで葬式の花輪のようになってしまいます。
それはともく、どうやら『行の薬玉』というのは、陰陽道の五色(紫・白・赤・黄・緑)を、四季の花七種の組み合わせで叶えさせなければならない決まり事があるようです。ならば、それが叶えられているなら、どんな花の組み合わせでも良いのではないかと考えて、土台だけ伝統を厳守したオリジナルの『行の薬玉』を作ってみたくなったのです。
実は、オリジナルの『行の薬玉』を作るのは初めてではありません。江戸期に描かれたと思われる『行の薬玉』の図案で最初に作った時、その出来が良かったのに気を大きくして、それほど時を経ずオリジナル図案による『行の薬玉』を完成させたことがあったのです。随分前のことであまり記憶していないのですが、藤や撫子、山吹といった花に換えたり、赤い牡丹を紫の花にした物だったのですが、何だか見ていられなくなってしまって、結局バラしてしまったのでした。
今回オリジナルの『行の薬玉』を作って見ようと思い立ったのは、京都に伝わる有職造花の技法での牡丹を作ったからだったのです。真紅の牡丹に仕立てられるのが常のようで、 花弁の形が違うだけでなく、花弁の中央に切れ目を入れて鏝当てするとか、非常に様式的な作りなのです。
私は白絹に紅を注した牡丹にしましたし、花弁の枚数や大きさからしても、決して様式通りにしたわけではなく、また技法を消化出来ていたわけでもないのですが、これはこれで面白く出来たので何かに活用しようと考えた時、その華やかさを生かすのは、やはり様式美の典型であるような『行の薬玉』が最も相応しいと思ったのです。

紫→菖蒲(春)・桔梗(秋)
白→ススキ(秋)・梅(冬)
赤→牡丹(春)・朝顔(夏)
黄→山吹(春)
緑→葉

伝統的な図案と重なる牡丹は二輪のみ、菖蒲は淡い薄紫にしたのを始めとして、朝顔・桔梗・葉と、軽快な色彩にまとめながらも、有職造花の品格のまま仕上がったように思います。
しかし、カメラというのは立体の高低を写し出してくれませんから、出来上がりの実際を伝えられていないのが残念でなりません。


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