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■ 近頃のこと

2018/04/19

花水木を作る

リン(猫)を玄関先でブラシをした後、必ず肩まで抱え上げて、高い位置から庭を眺めさせるのですが、それで私も、季節の変化を庭の様子から告げられたりしているのです。
先日風の強い日に、そうやってリンと庭を見ていたら、白の花水木がいつの間にか花盛りになっていました。近くに寄ってみると、花弁の先端にある深い窪みが黒茶に縮れていたりして、それが花水木の花ならではのアクセントになっているのです。
そんなこんな見ているうち、あの花弁を有職造花の鏝当てで作ったならさぞ映えるだろうと思ったら、直ぐに平薬に仕立てたくなってしまい、二輪ほど花が付いた小枝を折って来て、観察を始めたのでした。
とにかく問題なのは花芯で、どうやって作ろうかと数時間考えても決定打が見つからず、苦し紛れで何とかそれらしく作ってから花を仕立て、それ以後何度も花盛りの木の下に足を運んでは、葉の付き方やら枝の出方などを観察して、小枝のパーツを完成させたのです。
花水木が薄紅色の花ではなく純白なのは、亡くなった母の好みだったからで、そもそもその木は母が植えたものだったのです。花水木を有職造花に仕立てようなどとは、全く考えたこともなかったのですが、何らかで制作の興味を持つと、いつもながら居ても立ってもいられないようになるのです。
葉色も、くっきりと深い葉脈も興味の対象でしたし、羽を広げたオオルリの木彫り彩色が一羽が残っていましたから、色彩対比の面白さからも、何とかそれと組み合わせた花水木の平薬を仕立てられたらと思いました。
小枝がすっかり出来上がり、オオルリが止まれるような木組みに植え付けてみれば、花は難なく咲かせられてしまったのです。あれやこれや苦闘していない分、スッキリと構成出来ているように思います。
さて、今月に入って直ぐ、作業場の模様替えをしていたのです。手紙やら写真やら、昔作ったものまで、いわゆる思い出の品とか、過去の産物の殆どを指定のゴミ袋に10袋も処分しました。花水木とオオルリの平薬は、そうしてリニューアルされた仕事場で最初に生まれた平薬になりました。
『最良ものは過去にあってはならず、常に将来にあるのでなければならない。』とは、 NHK朝ドラ『花子とアン』で、ブラックバーン校長による生き方の指針でしたが、制作に置き換えてもその通りだと、疑いようもなくているのです。

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