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■ 近頃のこと

2018/06/09

リンの病気と屏風絵の完成

リンが喉の炎症のために、何も食べなくなってしまったのです。
血液検査では内臓などに異常が見られないので、とにかく呑み込めるようになりさえすればと、ステロイドの注射などを6日間続けても快方に向かわず、衰弱が著しく思えたので、入院させたのです。
全身麻酔で鼻から管を通して、胃に直接高カロリーの栄養剤を注入する治療法にしたのですが、注入は私でも出来るので、処置から3日目に退院したのです。
食べたい気持ちが強いのか、キャットフードに口を近づけるものの、直ぐに断念してしまうという連続に、これからどうなってしまうのかと不安を募らせた退院の翌日、何としても庭に出たいというリンを、荷造り紐による俄ハーネスに長い紐を付けて繋いでおくと、庭のあちこちに寝そべったり居眠りしたり、一時間以上も寛いでいたのです。
曇り出した空に私の部屋に戻って、椅子でしばらく寝ていたリンが、何か急に思い出したように椅子から降りると、一目散にキャッフードに向かうのを追いかければ、少し躊躇の次の瞬間、パリパリと音を立てて食べ始めたのです。
柄にもなく、リンの快復を仏壇にまで訴えましたから、長いこと食べ続けるリンには、つくづく安堵したのです。

さて屏風はといえば、何とか12ヵ月の図を描き終えて修正も済ませ、縁取りの文様を44も描き込んで、いよいよ和歌を書いた色紙に辿り着いたのでした。
とにかく図に相応しい和歌を選びだし、絹を染めて裏打ちしたものに、小御所の襖絵にある図柄を金泥で描き入れ、その上から万葉仮名に替えた和歌を書いたのです。
和歌どころか、何が描かれているのかすら殆ど分からず、何とか絵に起こしてみても、それのどこが3月なのかも不明な3番目の図については、古今和歌集にあった『谷風に解くる氷のひまごとに打ち出づる浪や春の初花』という和歌に当てはめ、岸辺に僅かな波を描き加えて、何とかこじつけてしまったのです。
ボンヤリとした写真から下絵を起こし、下塗りから青雲を描いたまま十数年も放置していた屏風でしたが、何とか完成に漕ぎ着けられはしたものの、何もかも私にはこれで精一杯なのです。何れにせよ、この屏風の本当の完成は、前に二番親王立像が置かれた時なのですが、その機会に恵まれるかどうか、残念ながら今は分かりません。
素養の無さが露呈するばかりであっても、ホッとした気持ちで眺めるのですが、奇しくも屏風を描き終えた日は、リンが12日ぶりに食べてくれた日に重なったのでした。

尚、『節句人形の有職造花』に、12面の図を載せてあります。

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