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■ 近頃のこと

2019/02/25

春は黄色の花に乗って

どうしたわけか、春先の花には黄色が多いのです。
福寿草、水仙、蝋梅、万作、菜の花、連翹、タンポポ等々、あたかもその輝かしい色を指標にして、春が馬車に乗って近付いてくるように、それほど遥かに遠くからでも見える程の解放された鮮やかさが、春先の花の美しさ、懐かしさというものでしょう。
以前作った『連翹』と『銀杏』の平薬が、どうもスッキリせず気になっていました。まるで木を剪定するかのように、ペンチでパチパチと枝落としして、大胆な手直しをすると、とりわけ『銀杏』など、見違えるようになりました。
不満足ながら『連翹』も整理は出来たのですが、そうして黄色の花ばかりを手直ししていたら、何だか春先の黄色の花を平薬にしてみたい気持ちで、居ても立ってもいられなくなってしまいました。浮き立つ気持ちを止められないのです。
さりとて、以前作った蝋梅やら山吹、そして連翹を再度作る気にもならなかったので、インターネットで春の花を検索してみたのですが、なかなか思うような花が見つかりません。
そこに、初めて耳にする『ムレスズメ(群雀)』という豆科の野草を見るなり、その花にも葉にも惹かれてしまいました。黄色の花が、まるで雀が横に連なって枝に留まっているように見えるための名前なのだとか、しかし、写真ではどうも枝の張り方やら、花や葉の付き方やらが分かりません。写真はまさに、その場の光景をそのままを写しているのですが、決して立体を説明してはくれませんし、図鑑の絵のような、いわば痒いところに手が届くというものがないのです。それだけで制作に入れるほどの写真というのは、殆どありません。制作のために、日々スケッチを重ねる必然性というのは、画家同様に有職造花の分野でもその通りだと思います。
それでも沢山の画像を見るうちに、どうやらムレスズメを平薬に仕立てるには無理なのでした。枝振りも花の付き方も単調なのです。
しかし、同じところに載せられていたイヌムレスズメ(犬群雀)という植物ならば、何とかなりそうだと思えたのです。花も葉も藤の構造の如くですし、枝振りも感覚的に把握出来ました。それで、実物を探す努力をしないまま、春先の黄色の花を作りたい一心で、見切り発車してしまったのでした。
構造上、葉裏が露になる300枚もの葉には、黄ばんだ和紙を貼って葉裏を際立たせたのです。
見たこともない植物ゆえ、実物とは違うかもしれませんが、何とか温かくまとまって、花粉症ならぬ、私の『春先の黄色の花症』もいくらか落ち着きを取り戻せたのです。

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