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■ 近頃のこと

2019/09/01

桜橘の熨斗飾り

よくよくのことがない限り、私は店で売られる有職造花の注文は受けません。ただ、たった2店ばかり、『よくよく』の例外があります。
先日、その1つから注文があって、小さな桜橘の熨斗飾りを10ほど作っていました。注文とはいえ、納品に賃金のやり取りはありせんから、手伝いをさせて貰うといった方が相応しいでしょうか。
この飾りは手頃な大きさと値段で、例えばその店に行った記念として求めるにも都合が良く、云わばそうした配慮で置いているようなもののようです。
揚巻き結びした太い朱絹紐に、金箔を撒いた鳥の子紙と檀紙を重ねて折った本体を下げ、桜橘の有職造花で飾って、更に長さ150㎝の絹五色糸を淡路結びして下げ、一箱2400円の化粧箱に入れるというのですから、どう考えても赤字でしょうけれど、敢えてそれを用意しておくことこそが、老舗の心意気と云うべきものかと思います。
小さな熨斗飾りですから、ゴテゴテさせることなく、それでも橘は実を2つと葉を18枚。桜は、花6と蕾4、葉4を1枝に構成して、桜橘の組合せにしたのです。
桜は八重桜のような桃色に染めました。小さな飾り物ゆえに、小ぢんまりと貧乏臭くなってしまわないように、いつになく派手目に仕立てたのですが、そうしたのにはもう1つ理由がありました。先日作った垂れ桜が、花を濃い目の桃色に染めて、とても上手くいったからなのです。画像では分かりませんが、これでも濃淡2種類に染め分けて使ってあります。
さて、五色紐も揚巻き結びの紐も、2組余分に送ってくれてありましたから、砂子の鳥の子紙がもう2枚同じ寸法で取れるだけ残っていたのを幸いに、紅白梅と菖蒲に山吹の熨斗飾りに仕立ててみました。何だか作り足らない感覚があったのです。
こうした熨斗飾りも、以前は季節毎に10種類以上も作ったものでしたが、すっかりその需要もなくなってしまいました。
今年は寒いほどの梅雨だったり、不順な天候続きだったせいなのか、ボーッと生きていたせいなのか、何時もならお盆前後の朝にハッとさせられる、光や風の筋の変化に気付かないままで過ごしてしまいました。いつの間にやら、空の色も雲の形もすっかり晩夏の様相で、桃色芙蓉の美しさが際立っています。
今年はリンの新盆でしたから、無地の提灯にリンの姿を描いて、盆棚に下げました。

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