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■ 近頃のこと

2020/07/08

蓮の活け花

先月はその半分ほども、黒漆塗りの桶に活ける桃と菜の花の有職造花制作に掛かりきりでいたのですが、今月に入って直ぐ、同じ花器に活ける蓮の花の有職造花を作ることになったのです。

水揚げをしない蓮のこと、ましてや真夏に料亭などで飾ろうとしても、大きな花も葉も、直ぐに見る影もなくなってしまうでしょうから、造り花で代わりになり得るものならそうしたいとの思いも、無理のない切実さかと思うのです。

蓮の有職造花は、以前平薬で作っていたのですが、一度でも経験があると手順が身に付いていますから、決して同じように作るわけではなくとも、サイズさえ導き出されてしまえば、制作に再び難儀することはなかったりするものです。

別に蓮の葉だけのことではないのですが、蕗だとかの大きな葉の場合に面倒なのは、1枚の葉の葉脈を茎に延長して、相応しい太さになるだけの本数の針金を貼り付けなければならないことでしょうか。

その針金を隠す意味もあるのですが、葉裏には更に、和紙を貼り付ける作業も要るのです。

とはいえ、根気よく丁寧に、接着剤が無駄なく均等に塗られることと、表を汚さないように、接着剤が滲み出ないよう注意するだけのこと。上等な和紙ほど、そのままで羽裏の質感を表してくれるものです。

有職造花は、あくまでも自然の構造を厳格に踏まえながらも、様式的な完成を目指すものですから、本物の写しだけで成り立つわけではありません。

言うまでもなく、季節からして蓮はさらりと涼しげに活けられていなければなりません。それで、花と蕾をそれぞれ1つだけにしたのです。

花弁は10枚ですが、外側に開いた花びらだと、針金を貼った裏が見えてしまうものですから、光沢のある厚手の絹サテンで裏打ちを施したのです。

葉は、これから開く、蓮の葉ならではの内側に丸まったものを1枚、大きく開いた葉を3枚という構成です。

黒漆塗りの容器というのは、艶やかなその漆黒がバックのようになるからでしょうか、どんな色をも際立たせてくれるように思います。

ですから、例えば春先の連翹から、牡丹、黄菖蒲、大手鞠、紫陽花、白菊、ガマの穂等々、季節の花のどんなものでも、映えさせてくれるだろうと思えるのです。

容易に手に入れられるものではない、至極上等の花器なのですから、花を実物大に仕立てなければならないのは確かに厄介に違いないものの、これから折に付け、これに活ける花を作ってみようかと考えているのです。

そればかりかその果てに、それらの花をパーツとして盛り沢山に挿した、あたかも花車の如くな花桶に仕立てたならば、それはそれは見事に華やかなことだろうとか思い巡らせてもいるのです。

それにしても、蓮を極楽に咲く花として異議を唱えられる方など居るものでしょうか。

そうこうしている内に、また盂蘭盆が巡ってきます。こんな田舎であろうと、盆の風情など年々消えるばかりなのですが、蓮の花や葉の美しさ、湧き上がる切なさには、何の変わりもありません。

蓮の活け花アップの画像

蓮の活け花全体の画像

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