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■ 近頃のこと

2020/11/04

2つの取材と簪(かんざし)作り

長く制作をしていればこうした時期もあるものなのか、8月に内閣府発行の『Highlighting JAPAN』という、海外に日本文化を紹介するという冊子から取材があり、それが発行されたと思ったら、今度は別の大手出版社から、また取材と撮影の依頼があったのです。

来年3月に発行予定という号で、有職故実の歴史について多角的に紹介しながら、現代に受け継がれている技術を取材ページで構成するというのですが、主な執筆と監修をされる研究者からの紹介なのだとか。
勿論その方と面識などなかったのですが、以前からホームページを見てくれていたらしいのです。

不思議なもので、この夏京都から頂戴していた装束の事典のような本の著者が、何とその方だったのです。
しかも取材の日、ライターやカメラマンに同行されて家までお越し下さったのには恐縮しました。

これを千載一遇のチャンスとばかり、菖蒲の鬘やら裳の引腰やらへの疑問を伺ったのですが、見解の根拠とされる文献やらまで紹介されながら即座に答えられたのにはひたすら驚愕。
何とも心地よい時間を与えて頂いたのでした。

出版社からサンプルとして送られて来た1冊を見ると、本文の所々にコラムというのが置かれていて、そこに有職造花が取り上げられるらしいのです。

すると1頁程度なのでしょうけれど、それにしては随分沢山の撮影をされて行かれました。

皆さん、何とも褒め上手の極みで赤面の至り。内閣府の取材で来られたライターが、美術に馴染みの深い経歴だったこともあるのでしょうけれど、まとめられた文章がとても理解の深い的確さだったのに感心させられたものですから、今回の女性ライターがどんな風に書き上げられるのか、とても楽しみでいるのです。

さて、色々な事が舞い込むといえば、簪(かんざし)を商われているという方から、有職造花で簪を作って貰えないかと問い合わせがあったのです。
結婚式の披露宴に付けたいという、胸元のコサージュは作ったことがあるのですが、簪は作ったことがありません。

様々な分野の職人に簪制作を依頼されて来られた様子でしたし、今時そんな店が成り立つのだろうかとか、基本的に業者からの制作依頼には応じないのですが、ちょっと興味を引かれてしまったのです。

簪は、1本の軸から放射状に広がる茎の先端に花を付け、直径9cm程の半球になるように組み立てて欲しいとのこと。
それならば別段難しい事も無いように思われたのです。

依頼は、①紅白梅と松に橘②松に3色椿③3色梅④牡丹に黄蝶⑤桔梗、女郎花、ススキの秋草という5種類の簪でしたが、松、梅、椿だと問題はなかったものの、ぼかし染めによる中間色が使われた牡丹や桔梗を簪に仕立ててみると、有職造花にしてはモダンに過ぎてしまったように思います。

しかし、どんな方がどんな価値観で求められ、どんな目的で挿されるのかなど分からないのです。
何よりも令和の世の商品ならば尚更、とりわけ私の感覚でなど測り知れない展開ばかりなのかもしれないと思えば、納めた後のことなど、簪の1人歩きに任せたら良いだけのことなのでしょう。

ともかく、店主の反応だけを期待して、さっさと送ってしまったのです。

内閣府発行 Highlighting JAPAN 8月 表紙

内閣府発行 Highlighting JAPAN 8月 英語ページ

黄色い実

松に椿

梅

牡丹に黄蝶

桔梗

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