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■ 近頃のこと

2021/07/16

女郎花の庭

家の庭に、背丈ほども伸びた数十本の女郎花が、瑞々しく鮮やかな黄色の花を咲かせ始めました。
花や形態は勿論のこと、何よりも咲いている風情から、私は女郎花にこそ、最も惹かれてしまうのです。

しかしそうでありながら、女郎花が有職造花に無くてならない12種の内の一つだというのに、私には決して作り得ない花なのです。
それがいつまで経っても解決しないままなのですから、ひたすらもどかしく残念でなりません。

というのも、御所に伝わったという月次平薬図案の7月も、江戸期に西村知備が著した『懸物図鏡』に所載される図案の7月も、共に女郎花なのです。

その復元を試みた折には、有職造花として反則だろうとは承知しながら、どうにもならずの苦肉の策で、忘れな草のドライフラワーを黄色く染めて使ったのでした。

所詮、そう見えなくもない‥‥という水準を出ることもなく、女郎花の造形すら写せないまま、未だ手立ても見つからず、その迷路からまるで出られないでいるのです。

直径1mm程の小さな粒状の蕾をびっしりと付け、それが弾けるように咲く女郎花ですから、それをそのまま作るというのはどだい無理なことではあるものの、何とか花の塊の形態くらいは写せないものかと、木彫り彩色でまでしてみたのですが、どうにも上手く行きません。

母の新盆に、女郎花が描かれた提灯を飾りたくて、白紋天とかいう絵のない提灯を買って来て、絵付けしたことがあります。

女郎花は互い違いの四方に、長い花枝を伸ばしますから、2次元の絵にするにも難しさがあるのですが、図案を描くほどにその成り立ちが知れて、結局今のままの私の発想では、どうやら女郎花を有職造花として作るのは無理なようだと、改めて諦めるほかなかったのでした。

同時に、図案が残されていようと、そもそも女郎花が有職造花で仕立てられた事など、実はなかったのではないかという、ずっと以前からの疑問も払拭されないまま、更に残されたのです。

さて、女郎花への憧憬は、ぼんやりとした写真しか残されていない月次図屏風の復元で、その7月の図にも及んでいるのです。

この屏風の復元については、2017.10.6と2018.5.22の『近頃のこと』に書いているのですが、何しろ昭和初期に撮影された、しかも実物ではなしに、写真に撮られた屏風を撮影したらしい、ぼんやりとした写真からの復元だったのです。

どうやら時雨の裏山とでもいうような光景ではないかという程度にしか見て取れないのですから、何故この図が7月なのかすら分かりません。
それで、女郎花を加えることで7月の図に仕立てたというわけです。

何とか見て取れる雑草に加えて、ススキにすら這い伸びて風に靡く葛と共に、何本か描き加えた女郎花でしたが、その黄色は薄暗い空と雨混じりの天候にも、随分と映えたようです。

毎日忙しく、巨大な染井吉野制作のために、夥しい数のパーツ作りに追われています。
今のところ、花数5,600、蕾1,900程ですが、それで1,480のパーツを作り、それを3つずつ使って1本の小枝に仕立てる作業を続けているのです。

最終的には、その小枝が650本以上になるのではないかと思いますが、果たしてそれで足りるものかどうか。
まだまだ先など、およそ見えません。

女郎花の庭 庭の花

女郎花の庭 提灯

女郎花の庭 絵

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