4ヶ月に亘る下仕事の積み重ねを経て、いよいよ木組みの開始です。
主軸になる幹がなかなか見つからず、随分遠方の造園業の知人も頼ってみたりしたのですが、結局家の裏にある竹山の梅から、屋根に掛かろうとする太い枝を切らせてもらい、それをメインの主軸にしたのでした。
私は、どう考えても植物にも思考や意思があるとしか思えないものですから、樹木を切るのが切なくて堪らないのです。
その枝は、家と竹山の間にある細い抜け道を、ちょうど私の背丈程の高さに覆うように伸びたため、雨の日などに下を歩くと、少し枝に触れただけでも葉に溜まった雨を浴びて、ずぶ濡れになったのです。
それでも、裏の雨戸を開ける度、日に日に膨らんでゆく蕾や梅の開花に、いち早い春の到来を目にするとか、たわわに実った青梅に、梅雨の瑞々しさを見せて貰ったりもしていましたから、切ろうか、更に他を探そうかと、何日も何日も迷い続けたのです。
しかし、雨樋に葉が掛かるまでに伸びていましたし、懐かしいグミの木まで覆い出していましたので、詫びながら切ったのです。
とても良い自然の造形ですから、枝の先端まで余すところなく使い尽くして、命を奪った償いにさせて貰いました。
木組みは、何しろ素材の善し悪しが命そのものですから、見込んだその枝を手前の主軸に打ち付けると、即座に成功が約束された気持ちになりました。
ストックしてあった、大小夥しい量の梅の木や枝を使って1本の木に組み立てて行くのは、これほど大きな立木の制作となると、まさに格闘技そのものですから、この染井吉野大樹の制作は、年齢からしても最後になるのだろうと、つくづく考えさせられたのでした。
とにかく、間口160奥行120高さ150cmという規模を念頭にして組んで行ったものの、結局出来上がった木組みは随分なサイズオーバーになりました。
家の中に入れるのも大変な騒ぎで、両側に180cm開け放したサッシを通すにも、枝の先端をたわませてやっとという有様。
何とかそこをクリアしても、花の植付けをする奥の部屋まで運ぶには、障子も襖も外さなくてはならなかったのです。
それにしても何という重さなことか。30kg近いことでもあり、先ずは枝の先端を10~30cm程剪定するところから始まったのです。
花が付いたら、最終的には間口187奥行141高さ150にも及ぶでしょうけれど、増えた間口というのは、やはり横に伸びた下枝が必要だと、改めて枝を継ぎ足したが故なのです。
それでも計算上ならば、141cmの奥行を手前にすれば、廊下のサッシを余裕もって通せる筈。
出ないとなったら目も当てられないのですが、1人で持ち上げられないのだから、試しようもありません。
釣瓶落としはまだ先のこと。
このあたふたも、亦々一楽と参りませう。