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■ 近頃のこと

2022/08/01

お茶の花の平薬

つい先日までの2ヶ月余り、まるで新作の依頼など入らなくていたのです。

その間、不満の残る旧作を手直ししたりでいたのですが、漸く届いた新作の依頼は、お茶の花で平薬をというのでした。

初めて平薬を誂えるのに、数多ある花の中からお茶の花をと言われるのみならず、3個の薬玉付きでと仰るのです。

失礼ながら、これは強者に違いないと思いました。抜きん出た感性に緊張したのです。

お茶の花は、私も昔から大好きだったのですが、有職造花で作るとなると、花はともかく肝心のお茶の葉が問題なのです。

肉厚に独特の丸みで繁る葉がお茶になるわけですから、お茶の花の平薬を作るとなれば、豪勢な数の葉が要るのは言うまでもありません。

とはいえ、勿論お茶の葉専用の抜き型など用意がありませんし、切り出すにも無理があるものですから、作ってみたくていながら、躊躇せざるを得ずに来たのです。

しかし、せっかくご依頼頂いたのですから、印象を重視した仕上がりに留まったところで、何とか作り上げたいと思いました。作り上げられるだろうとも思いました。

自分で作るのでありながら、出来上がりをとても楽しみに作り始めたのでした。

さて、平薬を好まれる方でも、薬玉を付ける依頼は殆どありません。

薬玉は3枚~6枚の柏の葉に囲まれます。
薬玉1個の場合なら、赤い玉と決まったようなものの、3個の場合だと、赤・緑・黄とか、赤・紫・黄とかいった原色の組み合わせになるのです。

そもそもが邪気祓いの力を持つ薬玉ですから、独特の妖艶ささえ漂わせるのですが、それ故に嫌う方が多いのです。

実際、さり気ない自然の光景を、30cmの環に切り取ったような創作の平薬だったり、物語性を与えた平薬には、薬玉を加えるのに難しさ、厄介さがあるのも事実なのです。

それはともかく、お茶の木の構成には、とても難儀しました。

花が主役なのだしと、最初は葉数を150枚ほどの最小限にして、スッキリと構成してみたのですが、それではまるでお茶の木に見えないのです。

成程、さすがにお茶の木。主役はあくまでも葉っぱに違いないということかと感心するばかりでしたから、それでまた160枚ほどの葉を作って植え足したのでした。

ご依頼の方には、お気に入りの一輪挿しがあるよし。それにもお茶の花を活けたいので、小枝を作って欲しいと追加のメールが入りました。

出来上がったお茶の花の平薬を眺めながら微調整するうち、幾輪かの花が余分に見えます。

間引き取ったのがちょうど5輪。それに葉をつけて、小枝に仕立てました。

そうやって、ささやかな贈り物も出来上がったのでした。

小枝

平薬

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