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■ 近頃のこと

2023/06/27

厄介な雉(きじ)の木彫彩色

前に仕上がった『卯の花とホトトギス』の平薬画像を見てくださった方が、
『私はその木の下に立っているのかと思いました。風が吹き、見上げた瞬間青空の下を時鳥が横切って行きました。
心の中を飛んでいった鳥はもうそこにはいません。残像と実像が逆さまになったような、不思議な静寂の中に入り込みました。』
との感想を送ってくれたのです。

『近頃のこと』など、全ての原稿はスマホで書いていますし、添付の画像もスマホの画面でしか確認しない私には思いもしなかったのですが、パソコンの画像で、実物を見るのとも違った客観視が出来た時、なるほど咲き乱れる卯の花の下から見上げた空高く、ホトトギスが横切ったという光景に見えるのです。

そしてそのほうが、どれだけ花と鳥との大きさの比率や遠近法に無理もなく、また情緒に溢れるものかと、その感性につくづくと、仕上がった平薬がその時点で一人歩きして行ったことを思ったのです。

さて、2月の『桜に雉』が出来上がりました。

前に少し触れましたが、先ず失敗作の高麗雉(コウライキジ)を雉に彫り直したのです。

写実に立ち返って随分と削り取ったばかりか、前を向いた首を切り離して、羽繕いに後ろを向いたポーズに貼り付けたりと大幅に改作しながら、アウトラインに出来る限り写実を留めるのを心掛けました。

雉の木彫彩色は、これまでに3、4回もしたでしょうか、その度に途方に暮れてしまっていました。

温泉旅館などで剥製が置かれていたりすると、直ぐに寄って観察するのですが、自然の造形に同じものなどなく、気まぐれに多様なことを思い知らされるばかりなのです。

写真でも実物でも、文様や色の割合が、ここはここまでで、必ずこうだとか、決めつけられるものがないのです。

ならば絵に描かれた雉が参考になるかといえば、見たい所、確認したいところが描かれているとは限らないものですし、そのまま写しても有職造花にマッチするかは、また別の問題なのです。

有職造花に組み合わせる木彫彩色は、装飾的な様式に消化されている必要がありますから、雉のように見る角度ですら変わって見える鳥は厄介極まりなく、私には手に負えないままなのです。

ともかく仕上ったつもりで、大胆に使った太い幹に据えてから、桜橘を作った残りの桜で小枝を仕立て、不出来な雉を埋もれさせるように、花咲かせていったのです。

桜橘用の残りのことで、桜の色が濃すぎるように思いますが、十二ヶ月平薬ならばそれも相応しいのかもしれません。

これもまた一人歩きを始めた先で、思いもかけない感じ方をして貰えたら良いのだけれどなぁ・・・と、もう既に12月の『早梅に鴛鴦(オシドリ)』制作に向かっているのです。

平薬

雉

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