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■ 近頃のこと

2023/10/16

7月の創作平薬完成顛末

市販の造花材料で作ってみた藤袴と同じ手法で、散々試行錯誤してきた女郎花作りに、もう何度目にもなった挑戦をすれば、形としては実物に近付けたように思えたものの、最も肝心な女郎花ならではの風情というものがまるでなかったとは、前に書いた通りです。

とにかく、造花材料の色や粒の大きさが問題だったのならば、ずっと小粒の白い造花材料を自分で色付けして使えば、恐らく女郎花の風情も現れ出てくれるのではないかと想像するのですが、胡粉の粒のような造花材料を色付けするのが、どうにも厄介なのです。

何しろ、ほんの3本分だけで600粒も必要だったのですから、反故にするのも勿体ないので、ともかく残り1つになったオリジナル12ヶ月平薬の7月『女郎花に鵲(カササギ)』の制作に向けて、先ずは3本を直径30cmの籐の輪に植えてみたのです。

藤原定家が鳥を詠んだ7月の和歌に、『秋待ちたえる鵲のはし』とありますから、橋の欄干を白木で作って、女郎花を植えた後ろに架けてみました。

いつものように、木彫り彩色で作っておいた鵲をその欄干に止まらせてみたのですが、右向き、左向き、前のめり等々、どんな角度で何処に止まらせようと、薄ぼんやりとした色の女郎花だけでは殺風景なだけで、どうにも様にならないのです。

7月の花の和歌を読み返してみれば、『たれにあひみぬをみなえし 契やおきし星合の空』とありましたから、ならばと、『たれにあひみぬ』を彦星織姫に、『契りやおきし星合の空』を天の川と解釈することにして、直ぐに笹竹を作ったのです。

2本の笹竹で空間を埋め、王朝継ぎ紙の短冊を下げてみれば、女郎花も生かされたのか、黄色の粒が光り出してさえ見えましたから、これならばと笹竹の後ろに振り向いた鵲を止まらせれば、位置もすっかり嵌って、7月の和歌2首を満たしながら、情緒のある七夕の平薬に変わってくれたのでした。

鵲の出来が良くないので、後々作り直すかもしれないのですが、これで一応、藤原定家の12ヶ月花鳥和歌オリジナル平薬が揃ったのです。

手前味噌も甚だしいのですが、この組物1つずつの完成度が、何故かこれまでの自作有職造花に比べて、別格の高さに出来上がって思えるのです。

人形や飾り物に詳しい友人が、『このシリーズは殊更品格が高く、出来が良いばかりか、あたかも未知の境地に達しているように見える。だから、大木さんはあまり長くないんじゃないかと思ってしまった。』と言うのです。

実は私もそんな風に感じていたものですから、そのつもりでいた方が良いのかもしれないとか思っていた先日、7回目のワクチン接種でも何の副反応も無かったと、クソッタレの仲間に話したら、『年寄りは先がないんだし、ワクチンなんて使っても勿体ないから、千枚漬けの残り汁でも入れといたんじゃない?』と言うのです。

言われっぱなしは癪なので、引っ付いた千枚漬けの如く、当分この世にへばりつくことに決めたのです。

女郎花のみ

女郎花に竹

鳥アップ

平薬

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