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■ 近頃のこと

2014/05/21

ヒメジョオンとタンポポ

まごまごしているうち、六月も目前になってしまいました。季節はすっかり初夏に変わろうとしています。
今少し前の季節といったら、山々に生い茂る新緑はそれだけでも美しく瑞々しいのに、それが雨に濡れては詩情にすら溢れるのです。間違いなく、一年の内で最も美しい緑とその息吹を目の当たりに出来る、ほんの束の間の季節なのですから、既に今日の雨には平凡な緑を見るばかりです。
葉桜の根元の光景を演出した平薬を制作したいと考えていたのは先にも書きましたが、ふと日陰に咲くヒメジョオンの花に目を奪われた事から、重い腰を少し上げたのです。
ヒメジョオンの花を作ろうなどと思った事はありませんでしたが、作り方に別段何の工夫も要らないことですから、パーツ制作として気ままに作ってみれば、思いの外面白かったのです。葉の色やらを薄い青緑にしてあるのは、きっと出来上がりは違うだろうに、未だ葉桜の日陰に置く心積もりでいるからです。
花が薄い桃色にほんのり暈かされているのは、桜の花を型抜きした残りを使っているためなのです。こうした小さな花などはそんな"始末の使い回し"とでも言うべき転用で端布を生かせますので、型抜きした後の僅かな端布でも無闇に捨ててしまうことはありません。この花など、6mm×3cm程度の端布に細く細く切り込みを入れてから、花芯となるものに巻いてあるだけなのです。
絹刺繍糸で巻いたパーツを合わせて枝振りを完成させると、幹をたわませたり、一花ずつを曲げたり角度を変えたりして、造花に息を吹き込むのですが、その時こそ自然観察の蓄積が絶対不可欠になるのです。
有職造花の技術そのものは、小器用な人であったならば、始めたその日からでも出来るものすらあるのです。しかし、構成や組み合わせとなるとどうやらそうはいかないようですし、また経験でどうにかなるものでもないでしょう。
染めにしても、どの色を良しとするかには、大きな違いが表れてしまいます。職人仕事に分類されようが、この辺りは『造形美術の範疇』のことですから、芸術上の資質が問われざるを得ないのです。

こんな日記を書いているうちに、名残りのタンポポまで出来てしまいました。綿毛は些か強引でしょうけれど、雰囲気としてご覧下さい。

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